家の日当たりがいいことに越したことはない、と思うのは誰しも当たり前のことです。
人の一日のバイオリズムだって、朝日を浴びることでスイッチが入りますし。
ただし、難しいことに敷地全体に日が当たるかというと、そんなお宅はほぼありません。
北側は影になりますし、周りの建物や木なども影響します。
庭にも日がほしいけど、やっぱり立地柄無理なこともあります。
しかし、だからって樹木を植えることをあきらめる必要はないと思います。
日陰に強い植物を選択して庭にすればいいのですから。
さらには、そこに花を咲かせることができれば家の方だってうれしいに決まっていますね。
そんなことを期待して、庭を作ってみました。

日の当たらないお庭に咲かす花々
植栽・施工
 家族で赴任されていたお客様がお戻りになられて、家を立て直されました。
以前と比べ物にならない立派なお宅が完成したわけですが、残念ながらお庭は縮小されてしまいました。
それはいたし方ない話で、ほとんどのお宅でそうなることだと思います。
 しかし、うれしいのは「いくら狭くなったとしても、木の1本くらいは植えたいじゃない?」というお客様の心意気です。
ただし、ここは家の前とはいえまったく日が当たりません。お客様的にもちゃんと育つのか、このスペースで庭になるのか不安に思っていることでしょう。
植え込み条件としては厳しい場所ですが、ご希望に添えるような庭にしていきたいと思います。
相嶋造園

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 在りし日のお客様宅のお庭。こんな広いお庭と別に普通車一台分の駐車スペースもありました。
建て売りですが昔の区画なので、今より単純に敷地が広いです。
出張中、我が家でお庭の管理をさせていただいておりました。考えようによっては、自分の方が長く庭にいたかもしれません。

 そこに、ど〜ん!っと大変素敵な家ができました。この写真は、まだ住まわれたばかりで何もない時のものです。何もないからこそ、余計に大きさが伺えます。
 家の前に、車の横付けスペースまであるので、3台駐車できます。贅沢のようですが、今はそのくらい欲しいですよね。

 こちらの住宅街は、軒並み電柱が敷地内に存在します。これが迷惑なんですが、それが購入条件ではなくすのは無理。おかげで、その裏手のスペースまで元の庭がそのまま残ってしまいました。自分としては、電柱のおかげで植栽スペースを確保してもらえたので、逆に電柱に感謝しなければいけないのですね。
 「居間から外を見て、あの電柱が気になるの。」お客さまのご希望の一つです。

 この植栽スペースは、全面的に日が当たりません。電柱の手前の道路と、真ん中部分にわずかながら日が入るようですが、南中高度が低い季節は、ずっと明るい日陰といった状態です。
 お客様としては、以前の庭で植えていたようなもの、例えばドウダンツツジもきれいに紅葉しないし、皐月などの玉ものも花が咲かないそうですので、植えてもつまらないので同じものはいらないということになりました。
また、お隣との境界そばですし、大きめの木や、落葉樹も極力植えたくないとのこと。
自分としても、その環境でも花が咲く可能性があり、できれば四季を感じるお庭にできるのが理想です。

 お客様のお向かいが、以前’生垣作製&オープンガーデン作製’でお伝えしたお庭です。’お隣さんと高め合う庭’で書いたように、皆で素敵な庭にできれば、総合的によく見えてくるはず。あえてお向かいさんと同じものを使うこともできますが、ここでは使っていない樹木にします。ただし、まったく違うものではなく、同系の種類も混ぜてみます。

 ちょうど、’今風の回遊式庭園を作る’と並行して作業を進めておりました。
幸運にも、こちらのイメージに合う樹木と材料があったので、どちらにも使うことでコストを落とすことに成功です。

助っ人を頼み、現場作業を半日で終わらせます。早速始めていきます。

 電柱隠しに選んだ樹木は1本立ちのソヨゴです。狭いエリアへの植え込みと、車の出し入れに邪魔にならないくらいの枝葉の出っ張りを考慮して、樹木で目隠しするならこれしかない!と思った木です。この木が仕入先に入った瞬間、こちらのお宅の庭作りが始まったと言えるベストな1本です。

 ソヨゴ以外に使うのは、斑入りヤマボウシ。花が咲かなかったとしても、葉がきれいだからです。オガタマ’ポートワイン’、シャラの本株立ちの4本。お隣との境界が近いので、大きいものは植えません。

 こちらも流用資材として、ヘキサゴンストーンを立てていきます。お向かいに使った材料もおしゃれなものなので、似た材料だと被ってしまいます。オリジナリティを出すには、まったく違う素材が求められました。
 それにしても、仕事ができる助っ人だと、こちらも楽できちゃいます。頼もしい〜。

 下草類を植え込みます。お客様の好きなクリスマスローズも、ちょうど前回山ほど使って、すぐに追加で取れる状態でしたから、こちらにもたっぷり使いました。他にもなるべく花が持ちやすそうな植物を使用しています。

 手前には、仕上げに角ばったガーデンストーン砂利を敷きます。実は、何色にするかかなり悩みました。ないと寂しいですが、半端な色だと、お向かいさんに似てしまいます。和風っぽく見せたくなかったので、、このちょっとキラキラしたロックストーンがいいかと。

 これで完成!です。
お隣がよく見えてしまうのが難点ですが、現状仕方がないとしています。
 
 後日、お客様より相談がありました。
「植えてもらったツワブキが花咲いたんですけど、折角の黄色い花が、裏手のお隣に生えている雑草の黄色と被ってきれいに見えないので、例えば石を追加してもらってもいいですか?教えてもらえれば自分で買いに行って置いてもいいのですけど。」とのことです。確かにそういう事ってあります。自分も完璧に作りこまないのはいつものことですし。
 最近、庭を作った後に、そのわざと作りこみすぎないスペースをすぐに埋めてしまうお客様がいらっしゃいます。自分からすると、それは今後のお庭の成長とともに作りこんでいくスペースです。本来なら来年以降の伸びを見ながら、さらにいい庭にしていくことが楽しいのですが…。

 今回のお客様のように、自分で勝手に施工する前に相談いただけると大変うれしいです。
確かにお客様のお庭ですから、自分でどうしようと勝手ですし、満足いただけるならそれも仕方がないことですが、プロの目から見ると、必ずこちらの演出や、将来のイメージを壊してしまうことをなさいます。
そのイメージを伝えるのはかなり難しく、こちらもいじるな!なんて強要できるものではありません。
後から見に行って、心の中でがっかりして帰る場合や、言える方にはダメだしすることもあります。
ですから,こちらのお客様のように、先ずはこうしたいというご希望をお伝えいただけることがありがいのです。

 こちらが、今回の完成形になります。電柱側からご紹介してまいります。
避けては通れない電柱ですが、隠せないなら飾ってしまうことにしました。
フェンスぎわの電柱の裏手には山吹を植えます。裏手からボサボサっとはみ出していくことで、電柱ばかりが目立つことを緩和するようにしました。大きさ不足ですが、電柱の前のスペースにヘキサゴンストーンをニョキニョキ生えてきたように囲んで、電柱自体をオブジェの一部に引き込みます。

 かろうじて朝日が当たるあたりに、カルーナを植えます。ここが当たるかは自信ないんですけど、広がらない植物が欲しかったので。その横には、アメリカ岩南天’スカーレット’。もともと赤い品種なので、彩りを期待しました。

 ほかにも、斑入りのヤブランなど日陰に強いものを奥に植えます。ソヨゴも花持ってくれるといいんですけど。お客様も気にってくれた赤い実が可愛いです。日差しが当たっているように見えますが、直接日光は当たりません。が、明るい日陰で、家の照り返しもあるせいか、いい条件の場所と勘違いしてしまいます。

 高低差をつけるため、また、乱雑にしないため、ほとんどがグランドカバーに近い低いものを使っています。奥に植えたサザンカは例外です。これも低く丸く横に膨らませる予定。赤かと思っていたら、つぼみにピンクのまじった白系の花でした。返って可愛いですわ。そして、クリスマスローズがどのくらい大きくなるかで、これからの展開が変わります。こちらも花を期待したい植物です。

 

 花を期待するだけでは人任せすぎですね。葉っぱでも変化をつけるため、特徴ある葉を重ねていきます。斑入りのヤマボウシの、ピンク系の葉色もおしゃれですし、コニファー類の色の様々な細い葉も美しいです。砂利の周りには、白龍とイワヒバをを植え、クリスマスローズにアレンジを加えます。

 石の追加とともに植え込んだニンジンボク’プリプレス’。葉も花もみんな紫色というお洒落な樹木です。基本的に常緑ですが、寒いと半落葉になります。
 仕入先で、「これ日陰でも花咲くかな?」と聞くと「日陰にも強いし、何よりこいつは昔は高くて買えなかったものだから、買っておくといいぞ。」と乗せられ購入です。きっと日当たりがいい方が発色も良くなるんだろうと思いますが、どのくらい成長するか楽しみにしております。

 ヘキサゴンストーンが入り、レイアウトも変更しました。実はこちらのツワブキは品種もので、葉に白くて丸い斑点の入る蛍ツワブキの仲間です。その周りにはヒメツルソバ、斑入りのふっき草を植えて、こちらも花と葉で個性を演出。

 今年はシャラを植えることが多かったです。不思議と年によって使う樹木ってあるんですよね。こちらで使用したのは本株立ちのシャラです。根元から幹を切り、ひこばえを形よく作り仕立てる、手間のかかる手法です。
 シャラって、最近は株立ちが主流になって、1本物は見なくなったかもしれませんね。そうなると1本立ちを使ってみたくなるひねくれ者です。いずれにせよ、これからも使っていく定番優良樹木の一つ。

 コーンヒューサー、宿恨リナリアの白花の花。はしの部分には少し背の高くなるものを配置したいと考えました。花の色のバランスも考えたつもりですが、どれだけ花を持ってくれるかドキドキです。

 石を追加したことで、庭の一体感と高級感が増しました。あとは大きくするものと、コンパクトに仕上げるものを選びつつ、花を咲かせるお庭にできればいいと思います。家に応じて条件が違うからこそこちらも勉強になってありがたいです。
 しかし、追加にしてしまった分、予算がオーバーしてしまって申し訳なく思います。

 周りの方から評判のよい花時のトキワマンサクの生垣。一年目からこの状態です。