人々の集う庭に・前篇
〜マンションの植栽〜
植栽・施工

 このお庭の施工を始めるのは、折しも東北地方を震度9という大災害が起こってからすぐのときです。
こんなときに呑気に仕事を続けていていいのか?そんな気持ちもありました。
しかし、今の自分にできることは、本業で貢献することしかありません。
この現状で本業を行える幸せを胸に、マンションの周りと言う歩く人々から丸見えの場所だからこそ、皆に元気を与えられる庭を作ろうと言う決意で臨みました。
*今回はボリュームが大きいので、前篇後篇にわけてお伝えします。

これで北東側植栽は終了です。
思わず分量が多くなったので、ページを分け続きは後篇にて。

相嶋造園

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 最初ご相談されたときはこういう感じでした。最大手の不動産屋さんが管理するマンションで、もちろん植栽も年間管理もそちらでなさっておりましたが、植えた木が大きくなるものばかりだし、正直金額を取る割に剪定が荒く、庭園灯も半分植栽に埋まっておりました。

 花を咲かせるよりも、小さくすることを優先にカット。個人で植えたものは、会社には関係ないと、一度も手入れをしてもらえなかったオーナーの植えられたサクランボも、初めて大きさ調整をしました。

マンション北東側

マンション南西側

 これがマンションのエントランス前!?荒れていて、正直最初は驚きました。シラカシやネズミモチなどボサボサになりやすい樹木のせいで、年2回剪定していてもこれでは…。ツゲの寄せ植えも大変なことになっています!

 こちらも庭園灯が見えるまで刈りつめました。ネズミモチやシラカシも一気に詰め、やはりオーナーが植えて一度も切っていなかった柿の木を実を生らせる仕立てにしながら小さくしました。
 やはり切るときは一気に切るしかありません。年2回の手入れなら、時期を合わせて花を咲かせる手入れも可能なはずでしたから。

 と、毎年切り詰めながら、形にしてきました。回数は樹木によって時期を変え、2〜3回行ってきました。
植栽後の管理は問題あるとは言え、植栽の内容は普通であり、物足りない気持ちはとてもわかる樹木ばかりでしたが、このまま小さく管理していくことは可能です。
 しかし、今回はこの’普通すぎる植栽’が、樹木が好きであり、自然豊かなところで育ったオーナーにとっては不満であったということです。折角植えるのですからね。
 サツキや、オオムラサキツツジなど、ありふれたもので寄せ植えするような植栽にして欲しくない。
自分も楽しみたいが、通る人が足を留めてくれるような植栽にしたい。
そういうご希望を持たれ、さらにイチイやボケ、シダレ梅など数点オーナーが植えてほしいという樹木をお伺いし、庭作りに入ります。

 自分の庭作りは、材料との出会いから始まります。
図面を先に引くよりも、この場所に植え込んで合う樹木を探します。さらにその樹木に合わせる他の材料を選び、イメージし、構想を広げていきます。
途中でプランが変更になることもあります。そのブレを調整していくために、毎回お客様との話し合いや意見交換が大切になるのですが、そうしているうちに、お客様自身がご自分で庭を作っている気持ちになれ、人任せにする以上に知識や考えが増えて、それがご自分のお庭の愛着にもつながるのです。


 今回の庭のテーマは、珍しく早々と決まっております。
それは、’地球’です。震災によって、人々は自然には勝てないと思ったかもしれません。
でも、自然は全てに中立のもので、なるようにしか動きません。それを無慈悲と捉えるか、厳しさと捉えるか、その中に違う美しさを感じるかは考え方次第です。
 同時に、人々は自然に癒され、パワーをもらってもいます。
このマンションの周囲3面にある道をぐるっと歩きまわることで、色々な自然環境に触れ、皆さんの心に元気を与えたい。それを強く感じ、決めたコンセプトです。

 具体的には、大きく2つに分けて考えます。
南西側を、日本的なアイデンティティーを感じる庭に。
北東側は、自然の移り変わりをテーマに色々な植栽パターンを作っていきます。
ちょうどボックスに区切られている植栽スペースをうまく使っていきたいと思っております。

それでは作業をはじめていきます。

マンション北東側

 昨年までの剪定のおかげで、今ではかなりすっきりした植栽になりましたが、樹木には大変申し訳ない。サクランボやキンモクセイなどごく少数を残し、後は全て抜いてしまいます。
 使ってあげたいですが、他には持っていけない樹木ばかりで、ほぼ全て処分します。その代りもっといい植栽にしますから!ごめん!やっぱり庭師は地獄行きだと思う瞬間です。

 今回もミニショベルにつけた新兵器のハサミが大活躍。低木は一気に引き抜けます。太い樹木は配線などへの配慮から手探りしながら根を切り、機械を使います。これだけしっかりした根だと、機械が負けてしまいます。

 残すもの以外、全てきれいにした状態。マンション北東側は、L字型に植栽スペースがあり、5つのボックスに花壇が分かれています。これをうまく活用し、ボックスごとに表情を変えていきます。

先ずはサクランボの大木の下から、生命あふれる深山幽谷を作っていきます。

 全体を見るために、石を配置します。使うは三波石。青味のある石の中に、白い線模様が入る、明るめの石です。
 サクランボの下に置いたメインの大石は、切りだしたものではなく、河原で水にもまれて自然にできた石らしいです。美しい模様だけでなく、荒々しさを感じる逸品です。自分も一目で気に入りました。 合わせて6個の三波石を配置していきます。

 石に合わせて樹木も配置していきます。なるべく庭園灯に被らないように樹木の大きさを調整します。場所柄常緑樹が主体となります。

 中央の大石の辺りを高くし立体感を出しました。大石から這い性のヒバを滝が湧きだすようなイメージで放射状に広がります。

 クリスマスホーリー、カルミア’サラー’、赤花アセビ、ドウダンツツジ、本霧島ツツジなど季節ごとに楽しませてくれる低木を配置しました。

 石の裏手には、ヒュウガミズキ、ヤマブキ、ボケ、ツワブキ、斑入りヤブランなどボサボサと広がる生命の力強さを感じる樹木を植え込みます。

 一番奥まったところには山アジサイ、柏葉アジサイ、山アジサイ’紅’、ボケ’あかね’を配置。日蔭でも花を咲かせられる可能性のあるものです。

二番目のボックスには、緑豊かな森をイメージした植栽に

 ここは、マンション一階にあるコインランドリーの入り口でもあります。人を迎える意味でも、森をイメージする意味でも、縁起ものであるフクロウを掘った石をどっしり正面に配置します。
 置いた瞬間から、近くの子供たちから歓声が。このフクロウ、思った以上に反響が大きかった!

 次にフクロウに合わせるのは枕木。
森と言えば木なので、木製の枕木を置くことで、人の手が入った感も表現しています。
庭園灯との絡みもあるので、実際の森には出来ませんからね。

 フクロウ、枕木を囲むように植栽したら、最後の仕上げに入ります。

 グランドカバーに、芝桜を植えます。これは実に5種類の色の入った芝桜で、色とりどりに花を咲かせ、自然の豊かさを表しました。枕木の前には、わかりますか?うちの子供が選んだキノコがあるんです。

 樹木は、シャラの本株立ちと、赤い幹肌と独特の形の葉が面白いサンゴカクモミジ。白花のアセビを玉ものに。フクロウの周囲には、フィリフィラ・オーリアやコニファーを。そして、枕木に添えるは、半落葉で赤いつぼみという珍しいブルーベリー’サンシャシン・ブルー’を。実りの喜びも味わえます。

 三番目のボックスは、縦半分に表情を変えていく予定です。草原のイメージから、荒々しいロックガーデンに変化させていきます。

 裏手から見る形になりましたが、ここには先に樹木を配置。一番のメイン(左写真左の樹木から)は、山取りのトネリコ。作られていない樹木なので、幹が野放図に広がり、人の手の及ばない自然を感じさせます。順に立ち性オリーブ2種、もちろん実を生らせるつもり!、本株立ちのシャラ、赤花エゴです。

 次に、正面から右半分に六方石(アメリカ産ヘキサゴンストーン)を立てます。突き立つような光景に、厳しい自然を表現しました。さらに、ひと山買いした鳥海石を加え、無機質さを強調。

 左半分は草原のイメージに基づいて四季折々の草花を手入れのたびに増やしていきます。
 基本的に宿根草でいきます。今回はと〜ってもお買い得(なんと数十円!)で仕入れたルピナスを色とりどりに1ダース植え込みました。
 ヘキサゴンストーンとの対比がいい華やかさとなりました。手前にはクリスマスローズの大株を配置。さらに豪華さが増します。

 ロックガーデンで使われる、角ばった色混じりの砂利を敷き、ちょっと砂漠っぽさを表現。それにふさわしいニューサイランやカルーナ数種、アメリカ岩南天、ローズマリー、フューケラなど色々な植物を多めに植えます。ここは背のある植物と、低い植物の差も見せ場にしています。しかも、花が咲いて初めて気づくシュウメイギクやスズラン水仙など日本的なものも植えてあるんです。

左半分は砂利ではなく芝桜に。鳥海石の岩場の間から草花が咲くイメージで。いくつか球根類も植え込みました。何が咲くかな?

4番目のボックスは、岩場からまた緑に戻っていく様を演出します。

 実はここが一番最後まで悩んだエリアです。イメージとして、前からの流れと、最後の緑の再生への過渡期に位置するため、どちらの要素も入れたいと思っておりました。3番目の材料と、先にできた5番目の材料を使いながら、間のつなぎを考えました。

 先端に置いたのは、鳥海石に囲まれたコニファー。西洋品種なのですが、垂れ下がる枝が不気味にも映る雰囲気。
 その裏手には、抜かずに残したキンモクセイ。その下に姫クチナシを放射状に、緑の爆発をイメージして植えます。

 残った鳥海石の小さめな破片を野趣あふれる野積み風の石山にしてみました。そこに数種のセキショウやふっき草などで息吹き始めた緑を表現。緑の再生です。

 庭園灯に合わせてツツジ’麒麟’とミツバツツジを植え合わせ。
 その奥は、本来ならキンモクセイの位置に植えたかったキンポウジュ。さらにサラサドウダンツツジ。5番目と同じ材料のタマツゲとトキワマンサクをつなげます。
さらに最後に、草よけにタマリュウを周囲に植え込みました。

最後の5番目のボックスです。こちらは植物だけで形にしました。

 ここのテーマは、ずばり緑あふれる植栽です。
実は植え込み前に、お隣の若夫婦に「今度はどんな素敵な植栽になるのですか?」と声をかけられていました。そんな楽しみにされているのに、花が咲かないような植栽にはしたくありませんでした。
 ここは全て常緑樹で、形をきれいに作ることで、作られた緑を強調するエリアにしました。

 今回3日連続でお手伝いを頼んだ、お客様でヒーラーのパドメ様。芝桜の花の色合わせを頼みました。いつになく真剣にカラーバランスを考えていただきました。

 トキワマンサクを円柱状に仕立てていき、こぼれるほどの花を咲かせます。一番端にアセビ。中央は、やはり縁石からこぼれさせる芝桜。空いたスペースにはタマツゲを。ツゲだってちゃんと管理すればきれいに作れることをもう一度アピールしたくて使いました。

毎年剪定をさせていただいていたマンションの植栽ですが、かねてから相談を受けていた植え替えに着手することになりました。
「ありきたりのものを植えた植栽はいや。道行く人が足を止めて、眺めて楽しんでいってくれる植栽にしたい。」というご希望です。
オーナーご夫婦は植物が大好きです。
しかし、お二人とも大病を患ったりと、ご自分で自由に動けることも減りました。
せめて自分のマンションだけでも皆に喜んでもらえ、自分でも楽しめる空間にできたらいいのに、と思っていらっしゃるのだと思います。
そんなオーナー様のお気持ちを感じ、自分に出来る限りのお庭を作ってあげたいと奮起しました。