庭の仕切り代わりに、よく石が並べられています。
レンガなど違って、石を使うと不規則な形が返って流れを作り出すのです。
今回は元々並べられていた石の延長に、新たな植え場を作るため石を並べてみました。

庭に石を並べよう
植栽・施工

 最初にお断りしますが、石を並べ方に正解はありません。
もちろんそこに作法は存在します。天端、見つけ、見込みなどを見分け、石を配置します。
しかし、それに囚われる必要はありません。持った石を感じること、それが一番大切なことです。
 自分の習った親方は、大きな石も持ってきてゴロッと転がして、
「石は、自然にある姿がそのままなのだから、ありのままに置けばいいんだ。」
とそのまま据え付けました。これが究極の悟りかもしれませし、真理なのかもしれませんね。

何度も書きますが、石並べに正解はありません。
並べる人、一人一人で正解が変わってくるからやりがいもあるのです。
いいものを作るには多くを見、実践するしかありません。

また、今回のお客様のように好みやイメージをどんどんぶつけてくれることはいいことです。
ご自分のお宅の庭なのですから、納得できないのに’任せておけば大丈夫’と割り切ってしまうと、どうしてそういう出来なのかわからないままになりますし、自身の上達もありません。
話を聞いてくれるお客様は、こちらも実はうれしいのですよ。

 ちょっと見えにくいですが、緑の支柱で囲われているところが、今回石を並べる範囲です。
石を並べ、土を盛り、ドウダンツツジとジンチョウゲを、中に立っている二本の支柱の位置に植えます。
 
これらは、お客様自身で構想した形です。
それを踏まえながら、こちらは商売人としてアドバイスをして一緒に施工していきます。

 もともと並べられていた石組みです。
これと同じような石で、新しい石組みも頼みたいとのことでした。

 どうやらこの石は、木曽石に’近いもの’のようです。
実際に木曽石を使うと高価なので高いものになってしまいますし、本物の木曽石ではないようなので、本物を使う必要もないでしょう。

 そこで今回選んだのが、八ヶ岳の石です。
質感は近いものがあり、結構出回っていて廉価ですし、ほどよい丸みがあるので石並べもしやすい、使い勝手のよい石です。
 年月が経つと、さらによくなっていくでしょう。

 まずは、芝をはがします。
残念ながら、ここは庭の中でも一番勾配が低いところになるため、水が溜まりやすく芝が枯れてしまっています。
スッコプを隙間につっこむと、簡単にはがれていきます。

 では早速、石並べの作業に入りましょう。
左が、自分が石を並べるときに使っている道具です。
屈んだままでも使える小型のスコップ(切れ味良く研いであります)と、こちらも片手で扱える小型のバールです。バールは鍵になったところで地面を掘ったり、土を突きいれたり、石を固定するために力を込めてどついたりするのに使います。
 何も専用の道具を用意する必要はありません。
自分に合う道具は、作業を重ねる中でわかってくると思います。

 最初の出だし。
お客様は前の石組みと離して線を取っていましたが、独立させたままではおかしいので、小さく細めの石でつなぎを入れてみます。
 そうすることで、庭に一体感が出ます。

 小さい石を置いたので、次は反対に新しい石組みをはじめる基点とする、大き目の石を入れてみましょう。
左は刈り置きしたものですが、大小バランスを変えることで、どちらの石にも表情が出てきます。

 石材には、必ず加工したときに残っている表面と、裏面があります。裏面は凹凸が激しかったり、尖っていたり、くびれていたりしていて、ほとんどが表に出せる面ではありません。
しかし、特に石組みはたくさんの石で、全体の表情を作るものです。
ですから、中にはわざと反対に使う場合もあります。
何度も石を転がして、自分にしっくり来る向きを探します。
それが、石との対話だと思っています。
それが、並べる人の個性を表すのです。

 本来ならこのくらいまで埋めたいですね。

 尖ったところがあたる部分はよく掘って。

 据え付けたらバールでよく下面に土が入るようにどつきます。

 大きいのを置いたので、次はわざと残したくびれ部分にはめ込むように、石を寝かせて平たく使って合わせてみました。

 その後はまた大き目の石で。
変化をつけて四角いイスのような形に出っ張らせてみて。
石の天端は、尖っているより平らになっているほうが自然に見えます。

 その後は、小さい石を二つ続けて平坦な感じにしておいて、次の石を強調させます。
 石と石のつなぎ目は、できるだけ鋭角なラインにならないように気をつけて並べてください。

 そしてまた大き目の石を並べ、大きめでも形の違う石を続け変化を出します。
石がつながっていくと、作業しているほうにもだんだんこちらもリズムが出てきました。
 平らな天端がくどくなく、石同士のつなぎ目は広がっていて鋭さを感じさせていません。

 石を並べる作業は、一見行き当たりばったりに合うものを、パズルのように組み合わせて並べているだけに感じるかもしれません。
半分は当たっています。いちいち全ての石の形を記憶できるわけがありませんから。
しかし我々は最後の完成形を描きながら石を並べます。
植木も植えて、土も入れて、仕上げを施して、初めてこの石組みがよくなることをイメージしながら施工します。
 石組み単体でカッコが取れると思わないでください。
また、石組みがカッコ悪く感じても、他のものとの調和の中でカッコよくなります。
石を並べながら、庭の将来像へのイマジネーションが膨らんでいければ最高です。

 では石並べを続けましょう。
今回の石並べの自分の中のポイントは、既存の石組みのある右側より、何もない左側の方を変化を出して面白くすること。
植えた木に個性が出るように、石組みにそれを反映させることです。
ちょうど左側に向かい、真ん中付近まで来ましたから、この辺でさらに遊んでみましょう。

 最後に並べた石の左端は隙間が目立つ、よくない置き方です。
それを逆手に取って、さらに掘り下げて平らな石を挟み込みます。

 その裏手に、今度は石を立てて置き、さらに大き目の細長い石をつなぎます。
 今までは単なる順番に並べただけですが、こういう石同士の重なりも面白く見えます。

 さらにその先には今まで平らだった天端を尖らせてみました。
そのあとの植栽とのバランスを計算しての演出です。

 ここで問題発生です!所用から戻ったご主人からダメ出しが!

 出だしでつないでしまった石が気に入らないとのこと。
これには、ずっと作業を見守っていた奥様もびっくり、と同時に怪訝な表情。
石をつなぐことで、とてもよくなったと思っていたようですので。
でも、ご主人のイメージでは、家のほうから流れた川が、岩の間の細くなったところに流れ込んでいくようにしたかったそうです。
そこにはたくさんの魚がいる、絶好のポイントだとか。渓流釣りをなさるご主人らしい発想です。
 自分としては、そこから流れが始まり、家に向かって川が流れていくイメージで、そこが滝つぼのつもりでしたが、お互い流れの向きが逆さまだったようです。
 しかし作業は、簡単に一個取り除けば終わりとはいきません。調和がとれるように、石同士かみ合わせてしまっていますから。
次の大きいのと、その次の石の3個を組みなおすことで対処しました。

 また、上記の尖った石も何故目立つところでそうするのかわからないとのこと。
これは木を植えるとわかりますが、ご主人に説明するとわかってもらえました。

 つなぎ目は、このように石を入れ替え離すことで決定です。
簡単に、「置いた石を反対向きにすればいいんじゃないの?」
なんて言われましたが、最初に書いた通り石には裏表がありますから、むやみに反対は向けられないのです。

 最初の石は逆端に使うことにしました。

 石並べが終了した時点で、石が動かないように、もう一度よくバールで土を入れてどつき、石がしっかり固定できているか確認します。最後に竹ぼうきで掃きながら、余分な土は掃き取ります。
「石が地面に根着いたようになったね。」ご主人も納得なさり、感心してくださっています。

 石並べは終わりました。
石の仕上がりをよくすため、次に木を入れてみましょう。

 尖った石の裏手には、ちょうどご主人がジンチョウゲの植え込み位置としたところを持ってきました。
一番家にいて見る位置から、石の間を通してジンチョウゲの幹が見えるのです。ジンチョウゲ自体、これから大きくなります。
ボリュームが大きくなった葉に、尖った石の先が当たるようにしたのです。
こうすると石も、庭木も別個のものと思えなくなりますね。
 もちろん、ご主人もとても喜んでくださいました。

 しっかりと土を入れ込んでみると、こうなります。
花壇に土が入ることで、今まで内側で隙間に見えていたところも埋まってしまってわかりません。
これも、最初から土を入れれば隠せると判断していたからできる配置です。

 しかし、これで終わってもまだ完成とはできません。これがプロの技の一つです。
石の隙間に、今回は玉龍を使ってメリハリとさらなる隙間隠しをします。

 洋でも和でも重宝する玉龍です。
花も咲くし、実もなる、ただの緑だけではなく、しかも管理がいらないという、うれしい植物です。
我が家では畑に群生地をつくってあり、こういうときにお客様にサービスで使います。

 つなぎ目が鋭角になってしまったところ、石のくぼみが見えるところなど、いつくかのポイントに植え込んで彩りをつけつつ、石組みに緑の柔らかさを与えていきます。

 石は水で濡らすと、本来の石の個性が良くわかります。
この石も、なんともいい質感が出ています。
 我々は、年月共に石に苔が生えたり色がくすんで来ることを’さび’が乗るとして歓迎します。

 庭の写真を撮るとき、よく水を撒いてから撮影しますが、それも質感を引き立てる技です。

 土抱え代わりに、奥のなだらかな下り部分にも玉龍をはり、最後にジンチョウゲの整枝をして完成です!

 プロとか、素人とか抜きに、庭が好きな方と仕事をすることは大変楽しいものです。お互いの意見のぶつけ合いの中からいいものが生まれていくことも確かです。

相嶋造園

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