自分のお庭を手に入れた人なら、誰しも素敵な庭を夢見ますよね。
庭に憧れて一戸建てを購入する方だって少なくありません。
しかし、家を買うって大変なことです。
希望通りいかないし、条件が良くなくても妥協が必要になることだってあります。
希望通りいくことの方が難しいと思います。
今回のお客様宅は、そういう庭を作る条件に関して言えば、決していいとは言えません。
厳しいと言っていいかもしれません。
だからこそ自分の出番となるわけです。

条件が厳しくても、素敵な庭が作りたい!
植栽・施工

 庭作りの見積もりのご依頼をいただいて、お庭を拝見に伺いました。
土地の購入から家の建築、出産など毎年ドタバタしていたこともあり、ずっと庭が手つかずになっていたそうです。
ちなみに、これは後から聞いた話ですが、一度はカリスマ庭師に依頼しようとして断られたり、他にも高名な方に相談してもうまく決まらなかったことから、うちではいい庭が作れないとあきらめていたそうです。
 その後、うちのホームページを見たお客様が、もう一度試してみるかと連絡したとのこと。
こちらも仕事が終わるまでその事実を知りませんでしたから、お客様にはくどい説明が続いたのが申し訳なかったです。
でも、変な感情を込めずに仕事ができて幸いだったとも言えます。
ともかく、まずは現地を見ていきましょう。
 

相嶋造園

庭を作る過程に、作業や予算の大小の差はそれほどありません。
やることは、材料の大きさや数が違うだけですから、基本は変わらないのです。
打ち合わせにもそれなりに時間が取られるのも一緒ですし、材料を探すのにも時間がかかります。
ですから小さくとも一定の金額は必要であると思っていただけるとありがたです。
こちらのお客様が、高名な方に相談した時の見積もりが結構な価格であったとしても、はっきり言って当然なのかもしれません。また、大小問わず、自分のこだわりたい庭の特性が出せるか出せないかで仕事を断ることも、一流の庭師の証でしょう。
しかし、どうやら自分はその方向とは違うようです。
自分のこだわりや費用より、お客様の要望をどれだけ聞き入れられた庭が作れるか、を大切にしたいからです。
世に残るすごいものを産み出す才能はないと自覚しております。
しかし、庭を望む人皆が、庭に時間をかける、お金をかけられるわけではありません。
そういう方々が、それでも笑顔になれる庭を作ってあげることができれば、きっと自分の仕事も無駄ではないと思います。

庭は、頼む側の理想と、作り手の理想のせめぎ合いで生まれます。
どこまで信頼し合えるのか、人同士の関係が一番大切なものだと思って仕事に取り組んでおります。

 こちらが今回の主庭になります。前の通りに車を止めておくと、奥の車が出られないのでその都度移動が必要になります。また、我が家の3tトラックでは入ってこられません。
 うちと、お客様のお宅の子供たちに手伝ってもらい計測。結果、幅3.5m×奥行き2mでした。ただし、ベランダが張り出していて半分の面積は雨が当たらないので、植栽スペースは半分まで。しかもかなり土地の勾配がきついです。排水マス等も全てここにあるので、低いものは埋まらないように気をけつけないといけません。

 こちらは玄関正面の表札、新聞受け等のある門柱です。
手前の植栽スペースは約10cm、実際には地下に基礎が張り出していて浅く、それ以下のスペース。
 
 奥様は、もともとご自分で和食器の店を開いていた方。通りで家も無垢材を使ったり、温かみのあるおしゃれなデザインです。集約された空間に無駄がありません。お庭にもこだわりを持っており、和風を基本とした、使うなら天然の材料を用いたいと考えていらっしゃいます。ご主人も庭いじりが好きな方で、もちろん作る際はお手伝いくださると力強いお言葉。

打ち合わせを重ね、一緒に庭木を探しに行ったりする中で、イメージのすり合わせをし、方向性を確認しました。
・庭木は主木1本、添え木2本程度にする。
 他は下草とグランドカバーを用いて高低差を出し、空間を広く見せる。
・玄関からベンチを経由し、立水栓まで、石を並べて道を作る。
 ちょうど雨の当たらない境を園路にする。また、傾斜の強い土地を和らげ、土の流れるのも軽減する。
後は実際に仕入れるときに何があるかで臨機応変にこちらで合わさせていただきます。
もちろん予算がありますから、こちらで任せていただく内容も多くなります。

 メインの木を1本立ちのヤマボウシとしたことで、当初よりスペースがコンパクトに収めることができ、ちょうど仕入れに行ったときに見つけた木など、打ち合わせより多く良いものを使うことができました。
 本来は、庭の正面にある掃き出し窓の目隠しと日よけのため、株立ちのボリュームある木で、高さもそれなりに大きくしていく予定でした。ご希望は落葉樹の株立ちでしたが、探しに行ってもなかなかこの場所に収まるベストなものが見つかりません。その中で、大きな樹木の間にひっそり隠れていたこちらの1本立ちのヤマボウシを発見。幹は1本ですが、上に行くに従い幹がいくつかに分かれていて、自然なぼさぼさ感と涼しげな雰囲気がある木でした。最終的に候補の中からこれをご夫婦が選ばれました。
 植栽準備に、仕入れ先にヤマボウシを引き取りに行くと、昨日セリで入手したという山取りのトネリコを発見!これはかなりおしゃれです。これは是非ともヤマボウシに合わせてダブルメインの樹木として使いたくなりました。
もちろん、トネリコを見せた時のお客様の目の輝きは語る必要がありません。
つくずく庭木は出会いだと思いました。

 お客様と二人で植え位置を合わせ、トネリコ、ヤマボウシ、そしてリクエストのあった山つつじを添えに、一番の奥の角に植えます。御影石の平板を並べて園路とするので、平板を仮置きしながら位置調整、高さ調節をします。
支柱を立て格好をつけると、樹木の植え込みは完成。今度は平板を突き込んで固定し園路を決め、下草植えから仕上げに入ります。

 新聞受けの横は、南天で落ち着きます。
いくつかお持ちした候補の中から、こちらを選ばれました。
かなり無理な幅ではありましたが、根っこをなるべく平たくして、さらに収まりきらないところには石を置いて、根の保護とともに植栽の演出とします。
 白い壁に緑が映えます。この条件に押し込めるとしたら、かなり厳しかったです。ここは日当たりも最高!なので、下手なものでは返って枯れてしまいます。しかも目の前は道路。枝が伸びすぎてもいけません。自分の考えでは、ここは草花かツルものとし、隣に植木鉢で樹木を置くのがよいとしていましたが、この南天を選択されたことで、背のあるものを一体感があるように植えられてよかったです。

 一日半の施工期間で仕上げたので、途中まで撮れた写真はもうありません。後は完成したお庭をご披露しながら解説していきます。

 庭の中心にヤマボウシがそびえます。その右側に園路に被るようにトネリコの山取りの株を配置。自然な枝ぶりが他に真似のできない形となっております。左奥は山つつじの株立ちと、園路の突当りにトキワマンサクを植えてあります。
一面に姫タマリュウを皆で植え、下草、さらに黒ボク石を幾つかポイントに置きます。
ベランダ下の雨の当たらないところは植栽が厳しいので、御影石の園路を砂利止め代わりにし、伊勢砂利の細かいものを敷き込みます。高低差をはっきりつけた分、立体感と内側に動けるスペースを確保できました。

 新聞受け前の南天です。幅は何とか押し込めましたが、基礎が地中では張り出していて、埋めきることができませんでした。ですので高植えになってしまいました。そのため、土が崩れないように、あるだけ持ってきていた黒ボク石を使い土抱えと庭の演出とどちらの役も引き受けてもらいます。同じ効果で、斑入りのふっき草も植えて彩りを添えます。
 右側の空いたスペースにはギンバイカの苗木を植えましたが、玄関正面のスペースですから、草花を植えたり、今後の成長のさせ方次第で楽しめる場所としてここまでにしておきます。
 

 真っ直ぐ放射状に力強く伸びるヤマボウシと優雅に、しなやかに幹を伸ばしていくトネリコ、よく見るとこちらのご夫婦のようです。園路にしな垂れるような枝ぶりは、あえて矯正せず自然に任せます。

 御影石も枚数が限られることと、高低差があることから、間隔や高さは一枚づつ微調整して並べました。
 将来の変更やリフォームも視野に入れ、石の下にはセメントを入れず、目地をしっかりモルタルで固めることで安定させました。

 園路の周りを中心に黒ボク石を配置。ヤブコウジ、コニファーをポイントに、全体に姫タマリュウを皆で植えました。タマリュウよりさらに低くて盛り上がらない姫タマリュウは、これからの期待株。増えるのが遅いのが難点ですが。

 ボク石に合わせるなら、イワヒバは欠かせません。さらに変化を出すためにハクリュウを植えました。ボク石は、できるだけ凹凸が強調されているものを選んでいます。

 敷地の端っこにあるマンホールやマスの蓋が高いところにあって目立つので、なるべく隠すように植栽しています。使わないつもりだったトキワマンサクでしたが、一番の奥の締めが必要となり、根が小さいことも助かりフェンス際に植えました。

 御影石の園路のおかげで、傾斜が軽減されています。もともと5cmの厚みある石ですが、この傾斜ではぎりぎり底が見えないくらいの位置で収まりました。浮いた底はタマリュウでカモフラージュ。思ったよりきつい勾配でした。さらに横方向にもになだらかな傾斜を残しています。

 ベランダ下になる雨のあたらないスペースには、伊勢砂利を敷き詰めます。自分としては珍しく3分以下の細かいものを使用。歩くところではない場所なので見栄え重視です。そこにボク石も置きます。

 ちょうど量水器の蓋のあるところです。パイプを避けながら、フェンスの壁もあたらないように入れ込むのに、持ってきたトキワマンサクの小さい根っこがぴったりでした。手前の置いたボク石で根占めをすれば、奥のメリハリもしっかりつきます。

 道路側には石を配置しておりません。逆に斑入りのアベリアやゴールデンモップのような洋物を植え、内側からの見た目とイメージを変えています。

 今さらの説明ですが、ピンコロを積んだ土抱えで周りを囲まれていたので、同じ素材の御影石の平板で園路を作りました。
バラバラの素材にするより、大きな部分で共通した素材は、庭全体の一体感につながります。そこに、ポイントに配置したまったく素材の違うボク石が、見栄えをよくしていきます。