回遊式庭園とは、庭を外から眺めるものではなく内部を歩いて色々な庭の顔を楽しむ、一種の大人の遊びであると言えます。
現存する、日本を代表する庭園の多くが、そういう作りになっています。
世界中で色んな様式の庭があるとしても、やっぱり庭は楽しむ場として作れます。
しかし、日本人のすごいところは、そこに哲学や思想を練りこんでいることです。
自分はそこまで高尚になれませんから、歴史や作法とはちょっと違う、何でもありの歩いて楽しめるお庭を作ってみました。
それを勝手に今風と題してみました。

今回は、家の敷地全体の植栽をゼロから作ります。
ボックス型の植栽スペースや坪庭も含め、土の残る部分の大半を任せていただきました。
主庭を含めてお宅まるごとの庭作りです。

〜お宅まるごと庭作り〜
今風の回遊式庭園を作る・前編
植栽・施工

 「新しく購入した土地に、家を建てて住む予定ですが、素敵な庭に憧れています。」
そのようなご相談が来たのは、今から10ヶ月近く前のお話です。
家を建てるためのハウスメーカーを選定して、図面ができあがってきて、さて庭も考えていこうとご連絡くださいました。
 お客様は、以前から自分のサイトを見て下さり、何もない状態からアドバイスをもらうほうがいいと理解くださり、まだ着工していない状態からご相談をしてくださったのです。
 自分の書いたことをわかってもらえて、実際にご相談いただけるのは大変うれしいことです。
まだ日にちもあるということなので、まずは年明けの1月早々にお越しいただいて木を見ながらお話をうかがいました。それから数回家ができるまで話し合いをしました。

相嶋造園

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 お客様の購入された土地は、元々駐車場です。かなり広いです。この段階でご相談いただけるのはありがたいお話です。
 図面を見ながらイメージを固めていきます。周辺状況が一番大切ですし、使い勝手を考慮することも必要です。
 家を建てるにはかなりの費用がかかります。ほとんどの場合、予算はオーバーします。
 庭を作る余裕がなくなりました、なんてことも実際よくある話です。
 電気や水道のメーターの位置や、外電源、水栓の位置や数を確認し、出来上がってからの庭の使い方を確認します。

 そして、9月に入って、ついにお宅の完成です!
 二人暮らしということで、建屋をコンパクトに抑えてはいますが、粋な作りであることが伺えます。
早い段階でご相談いただいていたので、こちらの要望を取り入れて庭をまとめてもらえたところもあり、作業は楽になりました。
 しかし、改めて見るとかなり細長く広いです。
ハウスメーカーの方も、庭の邪魔にならないようにしたのか、アプローチもまっすぐで最短です。
 しかも、奥は公共施設の駐車場です。ここも広いです。
そちら側から見ると、かなり覗けることもわかりました。
さらにはそこに植えられている桜の木、見てわかるとおりこれはちょっとカッコよすぎです!これに勝てる木は植えられないでしょう。

正直、ここまでしっかりと予算配分ができたお客様は他に知りません!当初通りの予算をとっていただけ、本腰を入れた話し合いをします。

 

 お客様的には、どういう庭にしたいという要望は特にないとのこと。
木としては、自然樹形の木が好きということで、その系統を多く使用します。その上で虫がつかず、伸びない木がいいと。
また、雑草が勢いよく生えてくるので、雑草が少しでも減るような庭が望ましいこと。
総じて管理が楽な庭がよいこと。
が挙げられます。

 それを踏まえたうえで、自分が出したスタイルが回遊式庭園です。
細長い敷地なので奥行が感じられる作りにしたいと思いました。
回遊式にすることで、何があるかを期待しながら、奥まで歩いていくワクワク感を演出できれば楽しいと思ったのです。
 自分の一貫した主題は、’庭は楽しむ場所’と思えることです。
折角の素晴らしいお庭でも、眺めるだけで終わらせては、家の方も庭から足が遠のき、最後にはそこに木が植えてあるだけのスペースになっているお宅もあります。
できればお客様には、庭にいるのが楽しい、落ち着く、と思えるような空間にしたいと考えます。

 さらには、伸びる将来性と、管理が楽になる利点から、必要以上に大きい樹木は使わず、植え合わせで勝負します。
その代わり、初期の予算も少なく作業も楽になります。
 この場所は新参者のお客様にとっても、周囲の摩擦につながる巨木は冒険すぎることも挙げられます。
しかし、気をつけなくてはならないことは、小さい樹木ばかりで貧弱にならないことです。
こちらのお客様のお宅のような細長く広い場合、乱雑になってしまっては逆効果です。

結論、
 数箇所に分かれる植栽スペースそれぞれに個性ある植栽を施す。
それぞれのパースを最終的に主庭で使い、全体に統一感を出す。
主庭は、表から見た顔と中を歩いていく顔を変え、発見を感じる庭を目指す。

 
例によって自分の庭作りは、最初に材料ありき、です。
植え込みのできるタイミングで、いかにこちらのお宅に合う素材と出会えるか、から庭作りがはじまります。
ですから、構想は以上であり、後は始まってからでないとどんな庭になるか自分でも細部までわかりません。
 しかっりした図面を見て、納得してから頼みたいお客様だったら抵抗があるでしょう。
しかし、デザイン料や図面代をいただきませんし、随時どんな風にしていこうか話し合う楽しさが好きな方には、日々変わっていく庭が楽しくなります。
 今回は、お客様がやる気なので芝も張ります。一番の適時が4月〜初夏だとすると、次に来るのは彼岸すぎ〜10月上旬くらいまでのまだ芝に緑色が残っている間です。
その時期に仕上げに持っていくために、まだ真夏日の続く9月上旬から準備に入ります。
今ある材料で、いかにいいものを探せるか、劣勢な時期ほどやりがいがあるというものです!

先ずは、入口前の花壇的スペースから仕上げていきましょう。

 まさに家の門前の、こちらのお宅の顔とも言うべきスペースです。門の両側にあります。
 同じ予算でも、ここにコニファーの列植なんてしたら、ありきたりすぎて家への期待感がなくなります。
 周りの方の印象も良くなるような植え込みにしたいと考えます。

 この花壇タイプの植栽スペースは、土の量が少なく水はけがいい上に、周りがブロックで囲まれ熱を持ちやすく、乾燥しやすい厄介な場所でもあります。
 オシャレにしたいからと言って、そのあたりを考慮に入れずに作るわけにはいきません。
 メインツリーに、広がっても剪定しやすい、西洋ヒイラギ南天’マホニア・チャリティ’とキンポウジュをメインに使うことにします。

 さらに、枕木を立て、黒ボク石を置きます。それに合わせるように、低木や細かい草花を植え込みます。シンプルに仕上げることで空間を広く見せることを意識しています。

 今回使用するのは、赤ボク石の砂利’レッドストーン’です。最近ではホームセンターでも見かけますが、この個性は見る人を惹きつけますね。ボク石は気泡が多い砂利なので、水分を表面に取り込みやすく、保水性を考慮しての使用でもあります。
 一応、お客様に使用のお伺いをたてましたが、さすが洒落者のご夫妻、この色に抵抗感なしでした。

 

 赤い砂利が、周りのブロックといいコントラストを出しています。お客様も、この出来には意外な良さがあったようです。
 通る方に「これからこの道を通るのが楽しみになった。」と言われたのが作り手としてもうれしいです。

 こちらは上記の奥側になるガレージ前のスペースです。独立スペースだけに根や、枝の心配が少なくて済みます。

 ということで、伸び放題にして花を楽しみたいロウバイをメインに、常緑のツツジ、枝を伸ばしたいすだち、秋を感じるススキを2種、最後にグランドカバーに姫イワダレソウの、ピンク花と白花をミックスして植えてあります。

玄関、アプローチ前の植栽

 入口を入って、ガレージと母屋の間にある植栽スペースです。
ガレージの入口のドアが隣にあるので、あまり枝を張り出すものは植えない方がいいかと判断。対象に、母屋側には窓があるため、西日よけにできる樹木も欲しいところです。

 正面から見ると、ほんの左はじに見えるかどうかの位置です。
しかし、玄関前のアプローチに準じた場所だけに、全体の引き立て役にしたいと思います。
何かインパクトのあるものをどんっといきたいところです。

 そこでメインにしたのが’石’です。
四国は愛媛産の石です。
緻密でありながら、流れる模様の美しさがひと目で気に入り、最初の洋風っぽい植裁を意識しながら違ったイメージを与えています。
スペースいっぱいに入った姿に場所が締まるのを感じます。
 西日よけに使うのは、ピンク花のシャラの株立ちです。それに添えて赤花のトキワマンサクを入れています。しっかりした形になるより、自然なボサボサ感が残すスタイルに仕立てていくつもりです。

 高低差をつけたいので、後は低いものでまとめました。
五色南天、斑入りのアベリアを控えに、芝桜をグランドカバーに敷き詰めました。お買得品の秋明菊(赤花)を見つけ、アベリアのピンクに対比して植えてみました。

 続いて、玄関ドアに通じるアプローチ脇の植栽です。
目の前は主庭になりますので、それを引き立てつつ、玄関までの遊びを備えた植栽を目指します。
 惜しむらくは、アプローチを直線で作ってしまったこと。折角スペースある場所なのに、なぜ直線でまとめてしまったか、ハウスメーカーさんのまじめさが一番出たところでしょう。四角いタイル張りなので、これだけでは面白くも何ともないのが本音です。
なので、植栽でお互いのよさを引き立てることができるといいと思います。

 基本となる樹木を植えます。
本株立ちのヤマボウシを一番のメインに窓の前に植え、自然樹を意識した夏はぜ、一番手前はドウダンツツジの玉ものをアプローチの両側に置き、植栽スペースにつながりを持たせます。これからここの紅葉はきれいになりますよ!落葉樹ばかりなので、斑入りのヒイラギをアクセントに。後はグランドカバーで緑を演出します。

 玄関前には、御影石錆色の道しるべ石を立てます。上から明かりを入れることが可能です。その下に、根府川石の乱張りを施します。
あえて四角いタイルに変化を出すために、乱張りをしてみました。迷った末、この狭い中でのセメントの使用は効果薄なので止めます。草取りで石がめくれてもまた置いてもらえればいいと思っております。

 道しるべ石の下には、ご夫婦をイメージさせるミミズクの置物を。乱張りは2箇所にわけ、目地には黄金姫セキショウを植え込み、他は芝桜を敷きこみます。芝桜がアプローチのタイルにはみ出して、直線を和らげてくれることを期待します。

主庭を作る前に、もう一箇所坪庭の作庭に入ります

 玄関ドアを開けた目の前に、坪庭用の植栽スペースがあります。家に入るまで庭を堪能してくださったお客様に、さらにもうひと感動与える所としては気を抜くわけにはいきません。最後の最後に重厚感を与える作りにしたいと画策しました。

 偽竹製の御簾垣を立て、向こう側を目隠しします。玄関前もそうでしたが、基礎や砂利など予想以上に不規則に入っていて、施工泣かせです。樹木も心配なところあります。

 この垣根をセレクトしたのは自分ですが、施工は商品を依頼した茨城の渡辺竹材店さんです。はっきり言って、偽竹になれているので、補強や天候の変化も考慮した施工をしてくれています。そういう部分は作製メーカーより頼りになります。しかも自分が作るより安い!今回もお世話になりました。

 使う樹木は、ヒメシャラの株立ちと1本立ちの山もみじです。T字型の植栽スペースなので、左右で別の顔に仕上げたいと思い、樹木も仕立て方の違う木を入れてみました。

 自然石の高級感と重厚感を表すのに使用したのが、御影石の縁石です。階段状に並べて平らな地面に起伏をつけます。そこにヘキサゴンストーンを立て、アセビやヒイラギ南天を植えて調整します。

 御簾垣の下には、斑入りのヤブランを並べて植え、その前に左側にはヒメツルソバ、右側には奥にタマリュウ、手前にイワヒバを植え、向かって右側のヘキサゴンストーンの周りは最後の仕上げを行います。

 特に右側は砂利を多用します。筑波産の白玉砂利を敷き詰め、暗くなりがちな空間を明るく引き立てます。中心に、信楽焼の庭園灯を置き材料が終了です。

 白い色だけだと寂しく感じたので、主庭で使うピンク砂利の大粒を散らしてみました。左側はヒメツルソバを植えて、緑色演出。ピンクの花も可愛く、まさにピンク砂利とイメージが重なります。
 完成!なのですが、なかなか全体の写真が見せられないのが残念です。

これで、主庭以外の作庭は終了しました。
ここで使われた材料の一部が、必ず主庭でも使用することにしています。
主庭を掲載したいところですが、ボリュームが膨らんだため、次回中編で主庭作りをお伝えいたします!