一つの庭にも、その家ごとの事情や成り行きがあります。
全てのお客様が、自分で欲しくて庭を手にしたわけでないことも事実。
今まで関心がなかったのに、突然庭の管理を任されることになって戸惑っている。
そんな方も、中にはいらっしゃいます。
ではどうしたら関心の持てなかった庭の関心を持てるのでしょうか?
自分は、その庭に家の方の’思い入れ’が必要だと考えます。
今回はそれを意識した、思い入れのある庭に手直しをさせていただきました。

思い入れのある庭にしよう
植栽・施工

 「父が亡くなってから、庭の管理に困っている。どうしたらよいか教えてほしい。」
コンサルティングにそんな御相談をいただきました。
ご依頼はこちらの奥様で、実はうちの奥さんと同い年。すでに小学生の息子さんと、幼稚園のお嬢さんがいらっしゃいます。主婦としては大先輩。頼りになる旦那さまと、実のお母様の5人暮らし。
 今までは、お父様が一人で庭の管理の全てを行ってきたそうです。それまで関心のなかったお客様が、このままではボサボサになる一方なので、庭を何とかしなければと立ち上がったのです。そこで、ご自分で鉢ものを買ったり、草を取ったりがんばるうちに、庭いじりも楽しくなってきたそうです。
とは言え、鉢ものなどは興味を持ちだしていじれても、庭木はどうしようもないわけで、一度プロに見てもらおうということになった次第です。

「おばちゃんの部屋から見る庭が一番いいと皆で話しているんですよ。
子供達は、朝学校に行く前になぜか日時計に手を合わせていきます。」
ちょっと意味が変わっちゃいましたけど、皆で庭を愛でてくれている話を聞くと、とてもうれしく感じます。
早くもミニチュア庭園の石が増えています。
奥様からも新たなご相談もいただいております。
皆さんで庭に思い入れを持っていただいて、家族が皆で関心を持つ庭になるといいのですが。

相嶋造園

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 奥の樹木などはもう数年手を入れていないそうで、大きさも5mに達するものもあります。
一度こちらで切って、形を作りなおすことになりました。

奥様自身も草取りやゴミ片しを手伝ってくださり、庭木たちが見事に蘇りました。

  ここで予定の仕事は終了しました。家族皆さんで、こんなにきれいになるものか、と喜んでくださいました。
いつも庭のことはやらない御主人まで、しげしげと庭を見つめ、次の日芝刈りをしてくれたそうです。
そういう風に喜んでいただけると、こちらも大変うれしいです。やったかいがありますね。

 後日、奥様から再びご連絡をいただきました。
「庭をきれいにしていただいたら、急に物足りなさを感じてしまいました。どうしたらこの殺伐とした庭をよくできるでしょうか?」ご自分では考えつかないということですが、どうしたいというイメージもないとのこと。
手を入れると庭はよくなることに気づいたお客様、もっといい庭にしたいと思い始めたわけです。
 ならばどうしたらよいのでしょうか?折角家族みんなできれいになったことに喜べる庭になったのですから、これからも皆さんで楽しめる庭にしたらいい、と提案いたしました。つまり思い入れを持てる庭をつくるのです。

 奥様はバラが好きで、自分でアーチも作っていらっしゃるし、挿し木もしています。ですから、メインの玄関わきにはバラの花壇を作りましょう。
 亡くなったお父様が植えられた樹木もあります。できればこれも活かして演出をしましょう。
樹木には、ブルーベリーや、クチナシ、キンモクセイなどがあります。お子さんの記念樹もあるとのこと。なおさら、それらを引き立たせる庭にしましょう。
 「石があると利用できますよ。」とお話しすると、石を探してきてくれました。これはご主人の田舎の群馬の石。しかも二人のお子さんも小さいながらも石を一緒に拾ったそうです。それらも使用し、お子さんも参加できる庭にしていきましょう。
予算は10万円。デザイン、仕様はこちらに一任。
市場やホームセンターで予算に合わせた材料を探し、奥様と一緒に庭の手直しを行いました。

 先ずはポストの横の、庭の一等地にバラ花壇を作る準備をします。植えてあった樹木を抜き、草も取ります。
 お父様が塀を積んだ余りのブロックで作った土留めですが、今回は花壇を作るために取り除き、別の使い方をしてみます。
ブロックと一緒に、プラスチックの波板も使われておりましたが、もったいない、これも再利用して使いましょう。

 同色のレンガや飛び石も購入して、花壇と一体感を持たせます。明確な歩道を作ると、今まで眺めるだけであったスペースが急に動的に変わり、眺めるだけではない楽しさが生まれます。
 これだけでは面白くないので、歩道には草を生やさない施工をしてみることにしました。’水で固まる砂利’というものを使用してみます。これは、お客様自身も別に使いたい所があるので、お互いに実験となりました。

おっとその前に、土が飛び散ると固まる砂利によくありませんから、先にバラを植え植栽を完了させます。

 こちらも同時に購入したバラを、花壇培土、バラ用の堆肥を使い植えます。
 将来的な大きさを考え、花壇には3本のバラにします。中央の1本はツルバラです。トレリスを建て、円柱状に仕立てていく予定。

 花壇の周囲にも緑を植えます。バラは落葉樹ですから、葉が落ちたら殺風景な花壇になります。それを補う意味と、花壇用に並べた材料の継ぎ目から土が流出していかない配慮のために、玉竜を植えこみました。後は彩り等を考え、斑入りのヤブランと赤葉のヒューケラと、ツルマサキ、奥の塀際に岩シャジンを植えてみました。

 飛び石の回りに、水で固まる砂利を使います。そのためにレンガで縁どりして枠とし、よく下を突き固めながら砂を敷きつめて下地を作ります。

 水で固まる石を容器に入れ、水で捏ねてからコテで塗ります。要するに、まさ土の中に細かい砕石砂利が入っているってことじゃないですか。材料的には使いやすいですね。なるべく固めにこねる方いいかも。

 コテを使って、しっかり押し付け、空気が入らないように固めます。この押し付けが弱いと、固まりも緩くなり、後々のひび割れの原因になりますから、できる限り強く押しつけながら表面を平らに仕上げた方がよいと思いますね。

 レンガのふくらみ防止に、外側にタマリュウを張って完成。まさ土よりこちらの方が手間がかかりますが、仕上がりはいいかも。
材料代もこちらの方が少々割高。極小の砕石を買ってきて、まさ土と混ぜてもいいかもしれません。
 説明に、1,2日シートをかけて養生するように書いてあるので、その通り明日1日かけておきます。急速に乾燥させると、表面のひび割れの原因になるそうです。この日は夜に夕立が来たので、その意味でもシートは掛けておいてよかったです。

 折角芝止めの排水溝をお父様が作られているのに、それを飛び越えて芝を生やしてしまってはいけないですね。まずは全面的に植栽側の芝と草を取りましょう。

 花壇が完成したので、その庭の続きを良くしていきたいと思います。お客様の調達してくれた石に、こちらの用意した大きめの石を組み合わせます。

 菊やギボウシは抜きましたが、先に植えてあるブルーベリーとモミジは、移植せずにそのまま使いたいと思います。
植えてあるものに合わせて庭をデザインするのも、一つのプロの仕事だと思っています。自分のやりたいようにやるのではなく、その庭のあり方を利用して、調和させながら変化させていくことを心がけています。

 今までは樹木が1本ごとに独立して植えてあるだけでしたので、殺伐とした風景に見えていました。そこで、目につくポイントを作りながら、庭全体に一体感が出る施工にします。
 角ばった洋風ガーデン用の砂利を使用したり、印象が和風一辺倒にならない配慮をしました。

 石を庭の適所に点在させ、それをつなぐように樹木や下草を植え合わせていきました。材料はバラバラでも、石が点在することで庭に一体感も生まれます。

 花壇の周りには冬に目立つ樹木を配置。石を置いた所に、ツワブキとバーハーバー、奥にはクリスマスホーリー、さらに壁際に南天の実が目立つようになっています。これならバラが終わった後も、庭が寂くなりません。
砂利の周りには、ヤブコウジやふっき草も植え込んであり、こちらも冬に彩りを添えます。

 普通、砂利で海を作ると、そこは入ってはいけないスペースなんですが、子供には通用しないですよね。ですから最初から石の上に乗って、その先にあるブルーベリーを収穫するデザインにしてしまいました。また、ここはキャンバスでもあります。ハートの形をした石を拾ってきたそうなので、可愛いですから目立つところに飾りました。

 お父様の残されたモミジを作り直します。同時にブルーベリーの大きめな株も追加。ここは紅葉できれいにしたくて、コハノゴンズイも追加しました。手前はアヤメ園になります。

 追加したブルーベリー’マイヤーズ’の実を採るために、植栽の中に割って入る道を作りました。
 これは、最初に入口のポスト前の土止めに使われていたブロック。家の周りを取り囲んでいる塀のあまりです。バラ花壇を作るために取り除きましたが、折角使える材料でもあり、最初から家を構成していた一部材でもあります。飛び石代わりに利用させていただきました。溝のあるブロックなので、その上を歩いても滑りません!

 庭の一番奥まった場所には電柱が立っています。これが家から見ると非常に目立っています。こういう野暮なものは隠す方がいいですね。
また、庭の奥は土が少なく落ち込んでいます。これだと庭が狭く感じてしまいます。それを変えるため、高く植えます。

 石がたくさんあってくれて助かりました。囲むことで15cmも高く植えたのに、まったく土がこぼれません。将来的には、奥側全体をこの高さにしたいですね。
奥の角が築山風に高くなると、返って奥行きがあるように見えるんです。
 植えた樹木はオガタマ。電柱隠しのため常緑樹です。別名バナナツリーと言われるだけに、花の芳香が強く、甘い香りがします。この手前にはジンチョウゲ、横にはクチナシやキンモクセイもあります。花時期が待ち遠しい樹木たちです。

 本当は、オガタマの植え込み位置までが今回の手直しエリアでしたが、材料に余裕があったのと、子供たちが楽しめるものを残したかったので、頭にあったアイデアの小型版をここに作ってみることにしました。
 草と芝を取り除き、赤花のトキワマンサクを植えます。

 ホームセンターで1個48円の小型レンガを発見!これは使えます。お嬢さんがすばらしいモデルを務めてくれました。やはりお父様が塀際に土抱え代わりに使っていたプラスチックの波板を、芝の張り込み防止と砂利止めに使います。

 以前他のお宅で使用して、1袋だけ余っていた小粒のおしゃれな砂利がありましたので、レンガを並べた隙間に埋めます。よく見ると玉竜の外側に波板で円が描かれているのがわかりますか?

 砂利とレンガをあるだけ使って、面白いものを作ろうと思いました。上記とは違った円形に並べ、鉄平石のかけらを立ててみました。イメージは日時計。レンガが開かないように玉竜を植えましたが、時間を示す位置に花物を植えてもかわいいですね。
しっかり防草シートを敷いて、砂をあんこにした上に砂利を敷いています。

 さらに子供たちが拾ってきた小石を使いました。小石だけでは埋まってしまってわからなくなりますが、同じくらいのレンガや小粒の砂利と合わせれば、ミニチュアサイズでもバランスが取れます。これからも好きなものを自由に置いてもらってオッケーの遊べる庭です。

 奥にあるミョウガの周りには、これも放置されていた普通のブロックを並べました。こうすると、手前との高低差もできて、メリハリがつきます。ミョウガを生やすエリアを限定しておく方が、庭もすっきりしますし。本来ブロックは埋めて固定するはずでしたが、時間の都合上置くだけになりました。
 ブロックの前に、鉢のままシュンランを埋め、横にミツバツツジを植えます。この日当たりのよい場所は、日時計と共に真っ先に春を伝える箇所にしました。
アベリア、イワヒバなどもアクセントに使用しています。

 学校から帰ってきた子供たちが歓声を上げて庭を走り回ります。最後のミニチュア庭園の砂利敷きや玉竜植えを、率先して手伝ってくれたんですよ。自分たちの石を使ったことや、今までなかった石などに興奮してくれています。

後日、砂利の固まり具合を確認しながら、改めて写真を撮らせいただきました。