剪  定

 

ホントはこんなことしたくはないですよ!
刈り込み手直し

人の行った剪定の手直しなんて、自分が逆の立場になったと考えても気持ちのよい作業ではありません。
しかし、額は別にしてお客様からお金をいただいている商売人であるなら、それなりの仕事はこなさないといけないと思います。
今回は一般の方ではなく、プロの後始末をしています。

最初に書いた通り、こういう手直し仕事は後味がよくありません。
我が家が特別な仕事をできるわけでもありません。
このくらい、普通にできるレベルの仕事のはずなんです。
もしできていないのなら、それは未熟か手の抜きすぎです。
それには年齢は関係ありません。経験よりも熱意です。自分より若くても、経験が浅くてもいい仕事ができる人間はたくさんいます。
いくらでやってもらえるかは重要なことではあります。
また、仕事の技術だけでは推し量れない人間関係もあります。
ただし、幾ばくかでもお金をいただく以上、責任とプライドを持った仕事をしたいものです。

相嶋造園

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 こちらのお宅には、都心部随一の植木の有名地、埼玉県の川口から庭師さんが手入れに来ています。
しかし、職人さんの高齢化とともに、大きな樹木や手間のかかる樹木はできなくなったということで、そちらの庭師さん以外に、我が家が手入れの依頼をいただいております。
 主に3m未満の刈り込みや枝払いに来る川口からの庭師さんが秋、それ以上の大きな樹木や松などの手入れをする我が家が冬、と2軒の業者が手入れを行うスタイルになっているのです。
 何せ農家のお宅なので、敷地は広いし大木は多い。我が家も3人で3日の予定で行きますが全ては終わらず、後日時間の取れるときに裏手の方などやらせていただいています。
ですから、人の仕事に手を出す余裕などない状況なのですが、あまりにも手抜きな川口の庭師さんの刈り込み後に腹が立ち、休憩時間を利用して形を取り直しました。

 この年最後のお客様宅になりました。
(年内中にお伺いできなかったお客様には大変申し訳なく思っております。)
こちらのお宅も、ご依頼いただいてからもう数年通わせていただいております。
 実は来るたびに気になっていたのですが、秋にいらっしゃっている川口の職人さんの刈り込んだツゲ、いびつなんですよね。
奥にある高い木の手入れをしながら見下ろすと、いつも気になる玄関前の、一番よい場所にあるツゲが目に入りました。
 何で、あんな真っ先に目につくところにあるツゲなのに、しっかり刈ってあげないのでしょうか?家の人が文句言わなければどんな形にだって仕上がればそれでいいのでしょうか?
 これで仕事納めという日に、こんな仕事を見せられたままでは納得して帰れません。ここは同じ商売人の意地で、少しでも形を整え直させていただきます!

 下の枝が多少変でも、頭部の形がしっかりしていれば問題ないと思っております。その頭部が妙にとがった三角形をしていて、しかも片側に持ちあがっているし、全体が傾いていてデコボコ。実物は写真以上におかしい形をしています。

 刈り込みも浅く、昨年以上に伸びた位置でしか刈っていないので、毎年モコモコ大きくなってしまいます。内側も枯れ葉がたごまって真っ暗!
これでは木にとってもよくありません。

 きっと、脚立の立てやすい側からだけ、機械を用いて刈ったのでしょう。後は見上げるように刈ったのだと思います。全周囲から刈っていないために左右のバランスが狂っていても気がつかないのです。頭部の下側も、2番目の枝にくっついていますし、デコボコです。途中で頭部に段差がついているのです。

 これらを短時間で修正しようと言うのですから、道具も刈り込み3種の神器を用意。先ずはエンジン式のバリカンで、切るのに手間取る太めの枝まで刈り込みます。その後ハサミで透かし、ゴミを払い、最後に電動バリカンで形を整え直します。
 時間の都合上、剪定中の写真は撮れませんでしたので、刈り込み前と、後の写真を並べて掲載します。
 いざやろうとエンジンバリカンを手に取ったとき、ご近所のおじさんがいらっしゃいました。

「おっ!さすがプロの道具は違うね。こりゃ切れそうだ。」
「ちょっとこのツゲ手直ししようと思って…。」
「ま、これじゃゼニ払えないよな。ゼニ払えるように切ってくれないとな。また来るよ。」
 これじゃゼニ払えない…、まったくその通りだと思います。こちらのお客様は人のいい方々なので、仕事に対しとやかくおっしゃいませんが、最低限の仕事はしないとお金をいただくわけにはいかないと思います。
おじさん、この刈り込み自分がやったものだと思っているでしょうね。刈り直しを見てもらわなくちゃ!

 変にとがっていた頭頂部をなめらかな曲線を描くように深めに刈り直し。エンジンバリカンを用いたので、通常大変な作業も数分で切ることができます。頭部下側も切り上げ、間延びしているエッジをやわらかく、均等に仕上げました。

 不格好に2番目の枝と重なっていた頭部も下部を切り上げることですっきり直線かつ、独立しました。

 枯れ葉が溜まっていた内部もよくはたいて落とし、長く切りすぎていた枝先も前回の刈り込み位置までは切り戻し、野暮ったく見える太枝は内側から切り、外見は細かい枝で品よく見えるように仕上げます。

 妙な重なりの枝があります。どうやら一つにくっついていた枝を二つに分けようとしているようです。
変に大きな玉があるだけでは全体のバランスはおかしくなるので、いいいことだと思いますが、切り方が半端すぎです。
1年で形を作り直せるものではないのですから、最初は思い切って形を作りかえるべきではないかと考えます。

 どうせ分けるなら、このくらい大胆に切らないと新芽が吹いてこないと思います。ここは玄関前の日当たりのよい場所ですから、すぐにきれいな玉になりますよ。

 刈り足りない頭部に対して、足もとの枝は刈りすぎです。
しかも、下部は内側にめくれ込んでいて、円盤のような形になっています。
 これらの状態は、バリカンを使用したときになりやすいものです。見上げて機械を使う場合、重さのせいもあり力が入れづらいので、どうしても浅くしか刈れません。しかし肩から下の高さを刈る場合、体全体で押し込め、また体に近くなる分遠近感覚もずれるので、予想以上に深く刈ることができます。
 円盤形に、下部がえぐれてしまうのも同じ理由です。
上から刈ってくると、疲れも出てくるので下の方に来るほど集中力も散漫になり、つい気がゆるんで雑になってしまうこともあります。これは他人事ではなく、自分でもあることなのでわかります。恥ずかしくない仕事をしなければいけないのは、自分も同じことだと反省です。

 円盤状に膨れていた先端を、深めに刈り直しました。
あまりお皿のように薄く仕上げても美しく見えません。
ぼってりした落ち着きも、下枝にはほしいので、これから厚みが出るように作ってもらえればいいのですが。

 掃除がしやすいように敷いてあるブルーシートの上に山になっているのは、刈りながら中の枯れ葉や枝をたたき落としたものがほとんど。こんなにこごってしまっていると、木にもよいわけがありません。できる範囲ではたき落としましょう。

 作業開始から約15分。やはり玄関前ですから、形が整っている方がかっこいいです。周りの玉ものもだんだん大きくなっているのが気になりますが、さすがに手がまわらないので、そのうちなんとかしましょう。
ツゲの奥のキャラ、カイズカイブキは、先に刈りました。それらを刈っただけに、一番手前のツゲが気になったのです。
 ちょうど終わった頃、さきほどのおじさんが再びやってきました。
「もう終わっちゃったの!?さすが早いね。おっ、これならゼニ払えるな。ついでに向こう側のやり直しなよ。あれじゃゼニ払えないよ。またチェックしに来るから。」
笑いながら去っていきました。

 え〜このツゲですか!これはちょっと大変ですね。春に思い切って修正をかけないと難しい状態ですね。次回の課題と言うことにさせてもらって、機会があったらここでまたご報告させていただきましょう。