剪 定

お宅まるごと before-after 3

お客様のご協力をいただきまして、一軒のお宅まるごとの手入れ前と後を掲載いたします。
そこには、自然樹形の手入れから、刈り込み、枝おろしなど、全ての作業が加されております。


流山市K様宅

今までは、庭を作ったところで手入れをお願いしていたそうですが、その方が引退されて、昨年はシルバーさんが行ったとのこと。
もともとお任せでお願いして作ったお庭らしいのですが、思いっきり和風テイストの作りになっております。
これだけ樹木が多いと、適切なサイズと枝ぶりを考慮しないとうんざりする庭になってしまいますね。
困ったお客様から相談を受け、年末に作業しております。

午後から出かけていて、仕上がりを見るのを楽しみにしていたお客様が、帰ってきてびっくりしたそうです。
「我が家ってこんなに明るかったんですね!」
こちらも、かなり思い切りました。喜んでもらえて幸いです。
庭木と言うのは、植えたら終わりではありません。植えた後、その樹木をどういう形にしていくか、どのくらいの大きさにして、他の樹木とバランスをとるかを考えていかなければいけないのです。
どうも本職でありながら、それを怠っている方が多いように思えます。
お客様と庭師は、もっと密接であっていいと自分は感じています。

 11月下旬に拝見しに行った時の写真です。
 紅葉がきれいだな~というのが第一印象。ですがぼさぼさで写真が撮れません。
 

 家を建てたとき、頼んだ庭師さんが、モデルガーデンになるように作ったそうです。日本庭園で使われる樹木がてんこ盛り!あまりにも木が多すぎて庭がうるさく、狭い。しかも常緑樹が多い。確かに家人が困るのもわかります。
 さらに昨年シルバーさんたちが手入れしたので、全て表面だけの刈込みで、中が込み合ってしまいました。

 お客様からは、何本か抜いたり、移植してほしいというお話もありましたが、先ずは樹木を小さくすることで様子を見てもらいます。お客様が考えている以上に移植作業は大変で、それだけ費用もかかるわけですから、できることからやりたいと思います。

 最初に道路ぎわの庭木から手入れをはじめます。サザンカの刈込み、ハクレンの枝おろしです。これにより庭への進入路を作ります。

 半分お隣にまで張りだしているハクレン。つぼみがたくさんついているのはいいのですが、枝が絡み合うほど大きく太く、上にも横にも伸びています。

 こういう樹木で大切なのは大きさの調整です。
 切るべきは細かい枝ではなく、太く伸びている枝です。枝の付け根から切り、木のバランスと、枝の多さを調整します。そして、細かく出ている枝の先端のつぼみをとっておきます。

 全体を切りそろえました。幹から段違いに横に伸びている枝は、それぞれが独立して固まりを形成することが好ましいと思います。上向きに出た枝はなるべく切り、横に伸びる細枝につぼみを残します。サザンカも2本の高さを揃え刈込みます。こちらは目隠しも兼ね、幅は無理に詰めていません。

 こちらのお庭はかなり手入れの参考になるお庭だなと思い、お客様に「こちらのお庭の写真HPで使わせてもらってもよろしいですか?」と聞くと、「ビフォア・アフターですか?」と先に言われてしまいました。そこまでご存知なら使わせていただこうと、このページが実現いたしました。

 上記の手入れをしている間、周囲のドウダンツツジの生け垣の刈込みを助っ人にお願いしました。
 この生け垣は、まだ作ったばかりのようで枝が充実していません。なので機械ではなくハサミを使って、揃えるように手で刈ってもらいました。
彼もいつの間にかプロ級の腕になっちゃいましたね。
 生け垣を真っすぐ刈るコツは、目線をなるべく刈る高さに合わせること。そして、窓のサッシや外壁の目字で水平を確認することです。

 ドウダンツツジの生け垣の上にある伸び放題のモミジもすっきりと。
 これはお客様が自分で買ってきて小さいものを植えたそうです。いつの間にかこの大きさになったとのこと。
 窓の目隠しになるように剪定します。

 入る場所を作ったので、ここからは家の奥から仕上げていくようにします。
 ここはチャボヒバ2本とサザンカ1本がロウソク状にあります。
 チャボは出来る限り刈込み、サザンカは重なっているので、もっと背をつめます。

 電動バリカンを使ってぎりぎりまで刈ります。
 樹形が曲がっていたので、姿勢を矯正するように刈込みに強弱をつけます。

 今までは、内側の枯れ葉をよく払い落としていなかったようで、それだけで込み入っておりました。今回クマデでよくはたき、枯れ葉を全て落とすと、向こう側が透けて見えるようになりました。形はまだ数年かけて手直しです。サザンカは半分の大きさまで切り詰めました。そうすることで、込み入っていた木々をすっきりさせます。

 続いて角にあるアラカシの手入れです。
 こちらも前回の手入れのときに、表面だけ刈っているため、折角の株立ちも意味をなしていません。もっと枝を透かして、幹を見えるようにし、本来のアラカシの良さを発揮できるように作りなおしていきます。
 右写真は途中経過です。幹から出ている細かい徒長枝を切り、幹と葉の間に空間を作り、全体に立体感が出るように仕上げます。

 アラカシと言うのは、庭木の中でも単体で見栄えがするおしゃれな和風素材です。裏手が透けて見えるくらいに枝を抜き、葉を減らし、また幹を見せる自然樹形に仕立て直しました。株立ちの良さを出すために、根元付近の枝は全て落としてあります。そうすることで、手前の低木と空間ができ、ひとつひとつ樹木の違いがわかってきました。
 特にこちらの場合は庭をすっきり広く見せる意味合い上、全体をかなりすけすけにしています。

 手入れの難しいところは、全ての樹木を同じように切ってしまってはいけないことです。特に花芽がある樹木は、剪定により花が咲かなくなってしまうこともあります。
 ジンチョウゲはその代表格で、先端に花芽を持つので、切ると花はなくなるし、花芽分化が早いので切る時期が難しい樹木でもあります。ベストなときは、花が終わりかけのときに、一気に半分近くまで切り詰めることです。
 それができない今の時期は、枝分かれしている位置まで下って、長い枝ごと切って出っ張りを減らすしかありません。

 家の方が切り倒したくて仕様のなかったネズミモチやモッコクも、切り詰め、枝を作ってあげれば思ったより邪魔ではありません。松も形を作るように剪定しなおします。

 こちらは1本だけ前めに植えられたモミジ。作庭後に、紅葉する樹木が欲しいという相談に、持って来てくれた木らしいのですが、随分と立派な木を持って来てくれましたね~。
 歩くのに邪魔な下枝は思い切って切ってしまいます。高さも少しつめますが、今回は必要以上に切ることはしていません。枝先は、横に大きくしたくないので、枝ぶりを見ながら詰めます。

 同時進行でキンモクセイの刈込みをしてもらっています。
 どの樹木もできるだけ小さくして生かそうと言う考えで手入れを行っていますので、こちらもぎりぎりまで追い込んでもらうように指示を出します。
「も、もっと切るんですかですか!?」助っ人から不安の声も。
そうでしょうね。ぎりぎりまで刈るには経験がものをいいます。自分も駆け出しのころはよく「刈り足りん!」と怒られました。

 がんばって刈るとこうなります。
 さすがに冬なので、葉がまったくなくなるまで刈るにはリスクがありますが、周囲をここまで追い込み、中を透かしてあげれば、裏側が透けて見えるこじんまりとした樹形にできます。
 こうしても、来年新芽が伸び、また花を咲かせる樹木の優等生。

 それでは今回のメインイベンター、マキの手入れに移ります。こちらのお庭は2人で一日という目算で作業しております。急ぎめで推移し、残った時間次第でこの木の手入れ方法を変えようと考えていました。頑張った分、腰を据えて取り組めそうです。

 どうしてこんな形になってしまったのか、今まで手入れしていた方々に聞きたいです!きっと誰も木の形を良くしようと思って手入れしていなかったとしか思えません。商売人の意地にかけて、このマキを感動を呼ぶ形に変えていきたいと思います!
 左写真は、頭の部分を作りなおしているところです。今まですぐ下の3つの枝が頭部とくっついていました。まだ細い枝はシュロ縄で引き下げ下枝としましたが、頭部左下に、上を向くように急カーブしている枝は、矯正しようにも太くて曲げることが困難です。

 こういう仕立てられた樹木の枝は、なるべく垂れているように形づくりたいものです。ここでは枝先を気詰めて、作りなおすことにしました。

 太い枝は曲げられませんから(千葉県内数か所あるマキの生産地では、独自の曲げ技法があります。これはマキの専門家だからなしえる技だと考えます。)、柔らかそうな枝を残して先端部分を切り落とします。そして残した枝で一つの大枝になるようにまとめ、引き下げます。

 ここまでは予定通りに枝の矯正ができました。残るは最大の難関である、家に向かって伸びている一番長い枝。
 これを通称、さし枝と呼んでいますが、必ずと言っていいほど仕立てられた木には存在する枝です。

 さし枝は、門の上にかぶるようにしたり、池に張り立たせたり、その下に灯篭を置いたりと、正面から見たときに樹木や庭ををダイナミックに見せるための演出枝で、このさし枝の向きや高さ、長さ次第で使う樹木を選ぶほど重要視されている枝です。逆にいえば、これの使い方で庭師の腕もわかると思います。
 今回の助っ人さんも、こういう種類の矯正は初めて見ます。横でゴミかたしをしながら見ていて、形を作る意味や、美しい形が何となく理解できたようです。それだけに、この一番太く、一番厄介に見えるさし枝を、この庭師はどう形にするのか興味深々の様子。ごめんね、別にアイデアはありません。矯正しようもないから、このまま正攻法で小さくしておしまいにするつもりでした。

 小さくするつもりで枝のそばまで登ったのですが、ひらめきました!
 そっか、切っちゃえばいいんだ!ちょうどその上に真っすぐに伸びる枝があるので、それをシュロ縄で引っ張り下ろせば、カバーすることができます。
 それに、元々家の壁にあたるほどさし枝が伸びていましたが、この家でそのさし枝には正直意味があるとも思えません。ならいっそ切った方が家が明るくなります。

 結果的に全ての枝を仕立て直しました。よく見るとずいぶん真っすぐな木なので、枝を均等に作ってもまったく違和感がありません。
ベランダまで接していたさし枝を切ったことで、庭に入ってくる光も変わりました。

相嶋造園