剪 定

将来性を考えての剪定作業

一戸建てを購入する場合、多くがすでに植栽済みの出来上がった庭付きのお宅だと思います。
自分であれこれ考えるのことも面白いですが、引越し作業の忙しさから、そこまで手が回らないものです。
そういう意味でも、最初からカッコがついているととりあえず落ち着くまではこのままで…
と考えるのも当然でしょう。
しかし、既存の植栽の問題点は、将来性を考えた植え込みをしていない場合が多いことです。
その場所に落ち着いたら、庭にも目を向けてみましょう。

相嶋造園
自分は、家や土地を扱う方々(特にお客様を案内する営業)も、もっと庭木のことや、お客様が住んでからの将来の庭のことも、知識として持っておくべきだと思います。
ある大手のハウスメーカーの友人と話したときでした。
自分は、数を頼みに植え込んだり、どんな性質なのかも分からないのに珍しい樹木だから、など売る時の見た目だけよくした植栽を批判しました。
種類の選別も、木の性質も知らずに植えているとしか思えず、現に住んでいるお客様が困ってこちらに連絡してきているのです。しかも、お客様が切りたいのに、そこの住宅街のシンボルだから切ってはいけないと、最初に契約してあると言われたケースもあります。
もう一つ書くと、あるお客様はガレージの脇にヒイラギナンテンを10本くらい列植されていて、車が傷だらけになるから、買う時は抜いて欲しいというと、その樹木まで含めた価格なので、抜いたら引き渡せないと言われました。
大手だから、信頼できる植栽をして欲しかったのですが、その時の友人の言い分としては、ちゃんと名のある専門家に任せてあるから、我々は信用して販売だけしているとのこと。
つまりは、自分たちではまったく樹木について気にしていないということですね。
この流れは、実は昔からで、しかもこの先にも変化が見られません。
将来性を考えていないダラダラ植えや、珍しい木による住宅街のシンボル化など、考えようによっては今の方が悪くなっています。
これを変えるのは、買われる方々の声だと思います。
しかし、買う時は気にしていなかった、わかっていてもどうしようもなかったら、後は自分で何とかしましょう。いい庭にする気持ちさえあれば、活きた庭にすることに遅いということはありません。

 「引っ越して3年経ちましたが、今まで忙しさにかまけて、庭を放っていました。今回初めてプロの方に相談したく連絡しました。」
お客様からのメールです。早速庭を拝見させていただきに伺います。
 拝見させていただいて思ったことは、お客様の為というより、売る側の見栄えで植え込んだのだろうなということです。きっとこの樹木がどう成長するとか、どういう形にするなんて植え込んだ人には関係ないんだろうな、とちょっと寂しくなる植栽です。
これってどこの住宅街でも感じることです。もちろんこちらの住宅も、有名一流メーカーのものです。
 かと言って植え込みをやり直すわけにはいきません。この庭をこれからどうするか考えていくには、先ずは今の植栽を、適性の大きさと、これから成長イメージを考えて剪定することです。
その上で、どうするか考えていきましょう。

 玄関とガレージの間の植栽です。車の脇なのに、ボサボサに伸びる樹木を植えているのはいかがなものかと感じます。しかも列になって数種類植えられています。邪魔なところは自分で切っていたということです。
 植栽は3列になっており、一番手前斑入りヤブラン、2列目日向ミズキ、レンギョウ、3列目がツツジです。この狭いエリアに、この種類を植えるのはかなり切る必要があります。

 一番手前側からハサミを入れます。先ずは日向ミズキを適正サイズに。3列なら、順番に背を高くした方が見栄えがいいわけですから、3列目のツツジがある程度の大きさになるまでは、それ以下に切っておくべきです。
 本来ブッシュ状に広がった形が理想の日向ミズキですが、細い先端を残すようにしてハサミで太めの幹から切り戻します。できれば刈り込まない方が自然ぽい仕上がりにできます。

 日向ミズキが小さくなったおかげで、ようやくツツジが顔を出しました。
 ここまで低く切らなければ、前も後ろも見えなくなるものを植えてはいけませんって。

 花付きがいい木なので、これだけ小さくしても来年の花芽はゼロにはならないでしょう。刈り込まないで仕上げると、葉も変な切り方にならないので、自然な仕上がりになります。

 同じように、さらにボサボサなレンギョウを切ると、奥にドウダンツツジがあったことがわかりました。ここだけ2列に同じものを植えて意味はあったのでしょうか?どういう形にするかはこれから考えていきます。

 さらに続きを見ていきます。
キンモクセイ、ヤマボウシの株立ちがあり、その下にはどうしようもなくなったワイヤープランツが伸びだしています。他のものを覆っているため、下に何かありそうですが、定かではありません。
 設計段階でちゃんと計画していたのかが疑わしく思える植栽と思わざるを得ません。

 ワイヤープランツをばっさり切ったら、モクセイの下からアジサイが。またボサボサにしたい木が手前に植えてあることになりました。モクセイと喧嘩しないように、なるべく横を切り、株の中心部で花を持たせるように心がけます。

 思いっきり切り詰めたので、ワイヤープランツがちょっと見苦しくなりました。が、ここはそれを悔やんでもいられません。ワイヤープランツの上に、ハクチョウゲが植えられていました。それに絡まないようにしないと共倒れです。

 ヤマボウシも伸びすぎた部分を切り、枝数を減らしました。他を低く抑えたので、これだけはメリハリを付けるためにも高さをあまり抑えていません。まだ細いので、先端部が垂れてこないようにだけ注意した長さに切ります。

 伸びすぎたワイヤープランツを思い切り詰めたので、出てきた芝生が茶色くなっています。芝は強いので、生きている部分が這い込んでいくでしょう。それよりもまた伸びていくワイヤープランツを普段から伸ばさないように気をつけないといけません。

 続いて、家の西側の通り沿いの手入れを行います。
コニファーと株立ちのカシなど常緑樹が基本に植えられています。
やはり下にはレンギョウなどが隙間埋めに使われています。
 初めのころは、どの木もさほど伸びていなかったのでしょうから数が必要だったでしょうが、今ではどれを残すか選択しなければどれもだめになってしまいそうです。
お客様も、どう手入れしたらいいか困っておりました。

 同じように手前から剪定していきます。自然樹形と整形樹形が同居しているため、メリハリをつける剪定が望ましいでしょう。カシは玄関前のメインツリーの1本ですから、それほど高さは低くせず、枝をすっきりさせる剪定をします。
逆に、自分の重みに耐えられなくなってきて傾いていたコニファーは、支柱をしっかり立て、大きさも小さくします。
こちらのヨーロッパゴールドは、円筒形に刈り込みます。その隣りのコブシは、正直あまりこのスペースに適しているとは思えませんが、とりあえずコニファーに引っかからない位置で枝を張らせます。

 そのまま奥の手入れもしていきます。先端が鋭角になるエメラルドは、三角錐の形に刈り込みます。やはり傾きが気になったので支柱で矯正し、しかも頭が5つになっていたので、2個になるように切ったりまとめたりして、これからの形作りの基本にします。
 お隣脇にもう一本植えられているカシは、迷惑にならないように小さくしてしまいます。フェイジョアなんて面白いものも植えてあります。ん~ここで単木で実を生らせられるかな~。1本でも実のつく木ですから、ある程度ボサボサにさせられれば可能性はあるのですが、植えた場所の環境は最高とは言えません。これから見守っていきましょう。

 下草がわりに植えられているのが、やっぱりレンギョウ。これ、伸びて大きく膨らむ木ですから、樹木の下に植えられても困ります。お客様も、なくなっても仕方がないと考えのようなので、自分としては、立っている枝は切り詰め、横に倒れるように伸びている枝を残し、高さをかなり低く抑えるように仕立てます。他にも表と同じような樹木が下草として植えられていましたが、どれも中・高木の成長次第では移植した方がいいです。

 家の外ラインに一列の直線植えなので、植え込みでの立体的な演出はありません。後から植え直しもできますが、今はそれよりある状態を活かすのが一番です。樹木によって高さを変化させ、どの大きさにしていくか計画することが大切です。

一列目の斑入りのヤブランが気になります。これだけは高さの制限ができません。株が太ったら引越しも考えた方が良いかもしれません。

 植栽はまだあります。芝生もあります。この広さなら、下草類を引っ越したり、植え直したりすることも可能です。庭仕事は大変ですが、将来どうなっていくかを楽しみを思える庭作業ができるといいですよね。